法人概要
設立趣意書
我々は、長年にわたり「患者に最善の医療を提供する」という思いで、日本の地方都市で高度な医療を追求してきました。
しかし、そのためには、未だ様々な障壁があります。
まず、医師本人が多忙な中で勉強を続け、医療の先端でどのような研究が行われ、その結果が研究室から臨床現場へと向かうどの過程にあるか考えながら、有望で新たな治療法を遅滞なく地域の患者のために提供していかなければなりません。
また、これまで多くの創造的かつ先進的な研究が、我が国の大学医学部や研究施設において行われてきました。しかし近年、「臨床」、「研究」、「教育」の役割を担い、多くの人材を輩出してきた大学医局や眼科学教室について、その在り方に揺らぎが生じています。大学病院への交付金削減、診療報酬の厳しい改定により、大学をはじめとした教育機関においても運営や研究に高い効率や利益貢献が求められるようになり、医師の診療面での負担増と研究時間の圧迫が大学の研究機能の低下を招いています。
更には、近年の新臨床研修制度導入は都市部への医師集中を招き、医師数が減少した地方では、大学眼科医局が関連病院への医師派遣を中止するなどの事態が生じています。地域社会にとっては必要不可欠な病院で、眼科診療体制が維持できなくなるという悪循環に陥っています。
このような医療・大学運営制度の変化は、若い医師の意識にも大きな影響をもたらしているのではないでしょうか。かつて大学においては、先端研究、高度な臨床を志向し、大きな成果を挙げる若い医師の姿を多数見ることが出来ました。しかし近年、大学での研修や研究に対する若い医師の期待感は、明らかに低下しています。多数の医師が、限られた財源や人的資源の中で過大な役割を求められ、大学での勤務や研修に希望を抱くことが出来ず、短期的な利益や利便性を優先して早期に大学医局を離れる例が増加しています。
このような大学の研究機能低下と活力衰退は、多くの国民が生活を営む地方社会や我が国の将来にとって、まことに憂慮される事態だと感じています。
このような事態を打開・構造改革するには、大学や医局だけの努力、あるいは地域や病院だけの努力では不可能です。そこで、社会の要望に答えんと長期的な視点の下、臨床、研究、教育に励む大学研究機関の職員や、困難な中でも地域の生活や歴史を守ろうと奮闘されている地方の方々を顕彰、助成することで、この困難な時代の課題解決を間接的に支援していきたいと考えるに至りました。
大都市のみならず全国の多くの地域で、多くの国民が、将来にわたって更に望ましい医療や生活を享受し、豊かな社会生活を送ることが出来るように、その環境整備を目的として、本財団を設立することに致しました。
以上
発起人一同